白のまぶしい光にまぶたを開くと、そこはやっぱり「白」しかない世界でした。
あまりに白しかないので、本当に目があいているのか
不思議に思って手を顔の前にもっていきます。
「うん、見える」
目の前に見えるのは、あまりに白と違う茶色の手。
ここで、少年は はた と気付きます。
自分には、「目」があって、「手」があって、
「声」というもので自分の思いを「口」にすることができると。
そして、世の中には「白」という色があり、
自分の「肌」には「白」とちがいすぎる「茶」がしっかりと色づいていることを。
まだ、自分の気付いていないことがたくさんある。
そう思うと、どこかこの白すぎる世界にさみしさが広がるような感じがしました。
でたい、しりたい、ものたりない、
そんな気持ちを強く心にいだくと、たしかに ゆらり と白の世界がゆらめきました。
茶色の少年は にやり と笑うと、「足」を使って一気にかけだしました。
心につよく つよく 白じゃない世界を望みながら駆けだすと、
白の世界はおびえたように、さらにゆらめいて、白の世界にほんの少しの穴を
あけてしまったのです。
少年は見過ごすことなく、そして恐れることなく
その小さな穴に飛び込んでいきました。
そうすると白の世界は背中のむこうに消えていって、
目の前に 「夜」の世界が広がりました。
「夜」はあまりに白とちがう「黒」の色に包まれています。
その黒はとても深くて、どこまでも続いているような恐ろしさをたたえていました。
しかし、その恐ろしさをやわらげようとするように、足もとにはなお
道しるべのように、少年を守るように、追い続けるように、
白の世界が続いていたのです。
そしてその先には、不思議な建物が集まる町がぽつんとあり、
少年を呼んでいるようでした。
少年はまたも不敵に笑うと、さらに速くかけてゆきます。
これっぽっちも怖くなんてありませんでした。
この、時は。
2010.11.3up